震災復興のいま

被災地の生活再建や産業復興、福島第1原発事故の収束状況など、震災復興5年間の現状をお伝えします。
(情報提供:時事通信社)

東日本大震災による避難者(復興庁調べ)は震災直後の約47万人から6割強減少し、17万4471人(2016年2月12日現在)。多くは震災前に住んでいた県内の仮設住宅などで生活しているが、県外への避難者も全国で5万989人に上る。
このうち4万3139人は、東京電力福島第1原発事故に見舞われた福島県からの避難者だ。故郷から遠く離れた沖縄には今も707人が避難し、帰郷できるか、この地に永住するかの岐路に立たされている人もいる。2015年国勢調査の速報値では、福島県の人口(15年10月1日現在)は5年前に比べ約11万5000人減った。減少率は5.7%で、事故前の前回調査(3%)よりも倍増している。
東日本大震災の避難者約17万4000人のうち、5万8948人(2016年1月末現在)は2万8685戸のプレハブ仮設住宅で生活する。阪神大震災では、仮設住宅は5年で姿を消したが、被災3県では、受け皿となる災害公営住宅の遅れなどから、仮設暮らしが長期化している。
被災3県の内訳は、宮城2万3763人、福島1万8602人、岩手1万6583人。宮城県が15年9〜11月に実施した県内7市町の仮設入居者に対する健康調査では、独居高齢者世帯の割合は22.7%に上り、12年度調査の16.4%からさらに上昇。回答者の半数以上が高血圧や糖尿病などの持病を抱えており、担当者は「外で体を動かす機会が減っており、健康悪化が進む恐れがある」と警戒している。
東日本大震災による大津波で被災した3県の沿岸部では、土地のかさ上げ工事と高台や内陸部への住民移転が続く。一方で、権利関係の調整が難航して土地の集約が遅れている地区もある。
市町村が指定する災害危険区域の宅地を買い取り、国が移転先の造成費や新居購入に伴う住宅ローン利子などを補助する「防災集団移転促進事業」を計画しているのは、岩手88、宮城195、福島47の計330地区。このうち造成工事が完成したのは岩手59、宮城140、福島41の計240地区で、進捗率は72%。
岩手、宮城両県では、被災住民の声がまとまり、いち早く集団移転先が完成した地域がある一方、避難生活の長期化が響き、まちのにぎわいが取り戻せるか見通せない地域もあり、「まちの再生」はまだら模様の状況だ。
東日本大震災で津波被害が大きかった岩手、宮城、福島3県で、計画されている防潮堤(計568カ所)のうち、完成しているのは12.9%の73カ所にとどまっている。当初は集中復興期間の2015年度までに整備する予定だったが、住民との合意形成に時間がかかり着工が遅れたり、建設資材や職人の不足で完成時期が延びたりするケースが目立つ。
防潮堤は3県の海岸線の2割強に当たる約400キロで整備される予定で、総事業費は1兆円。3県全体で338カ所は建設中だが、157カ所は未着工だ。最多の382カ所の整備を計画する宮城県では、「おおむね17年度中」としていた完成予定がずれ込むのは必至で、国が定める復興期間の最終年度に当たる20年度まで延びる可能性がある。
東日本大震災による津波で大きな被害を受けた岩手、宮城両県で水産業の再生が進む。漁港などの施設が整備され、2015年の水揚げ量は、宮城で震災前の78%(25万1000トン)、岩手で67%(11万2000トン)まで戻った。両県では、大震災で壊滅状態となった漁港や保冷施設などを順次整備。養殖業は再開希望者の施設すべてが復旧した。
一方、原発事故の影響に苦しむ福島県では、主力の沿岸漁業が試験的な操業にとどまり、水揚げ量は震災前の15%(6000トン)にすぎない。試験操業は12年6月に始まり、徐々に対象海域が拡大され、魚種も72種まで増えた。県漁業協同組合連合会は「本格操業への環境は整いつつある」としている。
東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島県の公立小、中学校114校のうち、45%の51校が仮設校舎で授業を続けている。福島を中心に復旧のめどが立たない学校も21校に上り、教育環境の整備は遅れが目立つ。
仮設校舎のうちプレハブを利用しているのは28校、他校や廃校などの間借りは23校。このうち今後の再建が決まったのは36校で、2016年度に10校、17年度に24校、18年度に2校が校舎復旧を目指している。
岩手県釜石市では、財源や建設資材の不足が響き、3校で鉄筋コンクリート造りから木造に設計変更を余儀なくされた。17年度の完成が目標だが、市教委の担当者は「住民の多くが『待てない』と内陸部へ転居した」と話している。
東京電力福島第1原発では、40年かかるとされる廃炉作業がようやく本格化しつつある。廃炉には原子炉内にある核燃料を取り出す必要があるが、政府・東電は1〜3号機の使用済み燃料プールからの核燃料取り出しを2017〜20年度に順次開始、21年には溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)回収に着手する計画だ。しかし、高い放射線量が壁となって作業は思うように進まず、厳しい状況が続いている。
東電は燃料デブリの取り出し作業に備え、格納容器内の放射線量などのデータを収集するロボットによる内部調査を進めているが、これまでのところ1号機の一部でしか実施できていない。現場では今も1日7000人近くの作業員が働いている。炉心溶融(メルトダウン)を免れた4号機では燃料の取り出しは終了しており、東電は「限られた人手を1〜3号機に回している」という。
東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県の沿岸部を中心とする48市町村で、復旧・復興に必要な職員が不足している。土木など技術系職員の不足が目立ち、背景には復興事業の本格化などに伴い、民間企業と人材の奪い合いが生じているほか、他地域の自治体も行政改革で職員が減り、派遣が難しくなっていることがある。
48市町村で必要な職員数は岩手775人、宮城1555人、福島422人の計2752人。このうち90%に当たる2473人は、全国の自治体、企業からの派遣や任期付き職員の採用などで確保したが、残り1割は満たせていない。職種別にみると、一定のスキルや資格が必要な技術系職員が117人不足。道路復旧や災害公営住宅建設に携わる土木職や建築職のほか、住民の健康管理を担う保健師などが求められている。
東京電力福島第1原発事故に伴う除染で発生した福島県内の汚染土のうち、1000万袋(約1000万立方メートル)超は仮置き場などで保管されたままだ。
県内の除染は、各自治体が2017年3月末までの完了を計画しており、14年度後半からピークを迎えている。作業が進むにつれ、仮置き場や民家の庭など現場で保管される汚染土の量は増加の一途をたどっている。環境省や県によると、仮置き場での保管量は、15年3月時点で約700万袋だったが、この1年間に約300万袋増えた。
同県大熊、双葉両町に建設される中間貯蔵施設への汚染土搬入は約4万袋にすぎない。中間貯蔵施設の建設用地取得は予定地の1%にとどまっており、仮置き場での保管が解消するめどは立っていない。

特集TOPへ戻る

トップへ戻る