小高ワーカーズベース(福島県)


http://owb.jp/

女性が活躍できる場を創出して、「住民ゼロ」から「あこがれの町」に

「住民ゼロ」の南相馬市小高地区でシェアオフィスを開業したひとりの若者。「100の課題を100の仕事にする」ことをミッションとし、一度はゴーストタウンとなった故郷に「仕事」を創ろうと奔走しています。協力の輪は広がり、女性のための新たな事業も始まった小高地区は今まさに、さまざまな可能性に満ちた場所になりつつあります。

大成功のスタートアップとなった「おだかのひるごはん」

福島第一原発20キロ圏内で、今も避難区域になっている福島県南相馬市の小高地区。今年4月、ようやく住民の帰還が予定されていますが、いまだに学校再開のめどは立っていません。そんな小高でシェアオフィス「小高ワーカーズベース」を運営しているのが、和田智行さんです。
和田さんは2012年、警戒区域に入ることが許可されると、NPOや企業など“被災地のために何かしたい”という人たちを案内するようになりました。「ここを見て『何かできそうだよね』っておっしゃるんですけれど、形にならない。その理由を考えたときに、ここには拠点となる場所がないからだ、と気づきました。ちょうど東京でコワーキングスペースが話題となっていたことから、シェアオフィスを作ろうと思ったんです」。
準備期間を経て、2014年5月に「小高ワーカーズベース」を立ち上げた和田さんは、同年12月に「おだかのひるごはん」をスタートさせました。「ここでは、復興支援でたくさんの人が働いているのに、食べる場所はない。せめて温かい豚汁でも出そうかというのが始まりでした。ここは誰も住んでいないけれど、飲食店は絶対にうまくいくという自信がありました」。
和田さんの“読み”は大当たり。「おだかのひるごはん」は連日、南相馬で働く人々で大盛況となります。そしてこの状況を見て、もとの店主が戻って飲食店を再開させることを決めました。大成功のスタートアップ。「だから『おだかのごはん』は、今年3月11日をもって終了します。ここでも飲食店がやっていけるということを証明できてよかった。そのほかにも、おすし屋さんと居酒屋さんが戻ってきて営業を再開する予定です」。

世界的メーカーの助力で「女性の働く場」ができた

新たな仕事も始まりました。耐熱ガラスメーカーとして世界的に有名なHARIO社のアクセサリー事業を手伝うことになったのです。「たまたまHARIO社で働いていた方がここにボランティアとして来ていて、『小高でアクセサリーを作ったら面白いかも』と本社に話をしてくれて……。トントン拍子に決まりました」。もともと小高は、昭和の初期まで「小高銀砂鉱山」があり、ガラスの原料となる珪砂(けいさ)を産出していた歴史があります。ガラスに縁の深い町に、この新事業も引き寄せられたのかもしれません。
小高第一号のランプワーカー(ガラス細工職人)となったのは、佐川美和子さんです。震災後、「自分の目で福島の現実を見たい」と、東京から南相馬に移住してきた佐川さんは「もともとモノづくりが好きだったので、やってみることにしたんです。HARIO社で研修を受けて、あとは自分でひたすら練習です」。小高ワーカーズベースの一角を工房にして、アクセサリーの制作が始まりました。バーナーでガラス棒を溶かし、ピンセットで形成していく、繊細な手仕事です。「今は、しずくの形をした小さなピアスなどをHARIO社に納めています。自然豊かでゆったりした時間が流れるこの小高で、こんなオシャレなものを作れる職場があるというのがうれしいです。今のところランプワーカーは私ひとりですが、職人になりたいという申し出もある。その人たちに仕事を教えて、たくさんの女性が働ける場所をつくりたいですね」と佐川さん。
和田さんは「まちづくりの核となるのは、やはり女性。女性が自立し仕事を持つことは、とても大事なことだと思います。僕、正直にいうと、震災前はこの町を“何もなくてつまらない”と思っていました。でも今は、“選択肢は自分で増やしていける”と分かったんです。“小高に住みたい”とあこがれの町にすることだってできると思います。誤解を恐れずに言うと、今まちづくりに関わっていられることがすごく面白いんです」と話します。
一度は住民ゼロとなったこの町。今、和田さんを中心としたさまざま人との関わりの中で、大きな可能性が広がりつつあります。


「買う」は応援になる。

寄付は応援になる。

特集TOPに戻る

トップへ戻る