
















大きな災害のたびに、「被災地には千羽鶴を送るべきじゃない」という論争が巻き起こる。だが、被災地支援の関係者は口をそろえてこう言う。「千羽鶴が悪いわけじゃない。問題なのは送るタイミング」。被災者のニーズに合わない支援物資は、一転して被災地に負担をかける存在となってしまう…。そうした物資のミスマッチを、どうすれば解消できるだろうか。










































































ほかにも「真夏なのに大量の冬服が届いた」「配りきれないほどのランドセルが届いて、保管場所のスポーツ施設が約3年間使用できなかった」など、ミスマッチの例は数多い。余った物資は一定期間保管された後に廃棄されることになるが、「保管や廃棄にもコストがかかる」という点も、こういったミスマッチの大きな課題。


被災地で保管場所を確保するのは簡単ではありません。また、余った物資のせいで被災者の利用場所が少なくなってしまうというデメリットも生まれます


















災害から時間がたつにつれて、被災者の気持ちや生活、インフラの復旧状況などは変化するもの。そして、それに合わせるように、被災者が欲しい物も日々変わっていく。熊本地震では、水が出ないときにアルファ米(水で炊けるごはん)が届いたり、水道が復旧した後に飲料水が届いたりなどのミスマッチが起きたため、市が一般からの支援物資の受け入れを中止したという。


1週間ほどするとコーヒーやジュースを求める声が増えてきたりもします。避難所の生活に慣れてきた頃に、コーヒーで少しだけほっとしたくなる…。そんな気持ちもわかる気がしませんか?
























ミスマッチの課題を解消するために「企業と民間非営利団体(NPO)をつなぎ、被災地に物資をすばやく届けるための連合体」として生まれたのが、緊急災害対応アライアンス「SEMA」。加盟するNPOが現地で被災者のニーズを聞き取り、加盟企業が支援物資を調整し、一括して避難所に届けるのが主な役割だ。


SEMAに加盟しているのは、51企業と6つの団体※。支援物資はその日だけなく、翌日にも配布できるような大量の物資が調達できる企業の力はとても大きいのです※2019年2月現在
















災害支援の寄付には義援金と支援金の2種類があり、自治体から被災者に平等に配分されるのが義援金、NPOなど災害支援を行う団体の活動のために使われるのが支援金だ。ちなみに、支援物資の調達や避難所生活のサポート、自宅避難者のサポートなど、「行政がフォローしきれない細やかな活動」を行っている点が、NPOの特徴。私たちは「支援金」という形でその応援ができる。


被災地のために何かしたい、という気持ちはすごくわかります。被災地に負担をかけず、しかも大きな力になれる方法として、寄付を活用してみてはいかがでしょう


























































































出典:CAF WORLD GIVING INDEX 2018
平成28年の内閣府「市民の社会貢献における実態調査」をみても、寄付経験のある国民はわずか41.2%。毎年のように災害が起きているにもかかわらず、日本の寄付意識は低い。とはいえ、ミスマッチの現状やNPOの活動の大事さを知ったいま、みなさんの寄付に対する意識も少しずつ変わってきたのではないだろうか。















取材協力:
- 熊本市 政策局 復興総室
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特定非営利活動法人 アドラジャパン
1985年設立。世界120カ国以上の支部と連携し合いながら、「人間としての尊厳の回復を維持」を実現するため、教育、健康、災害支援などの分野で国際的な活動を行っている。
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公益社団法人 シビックフォース
2009年設立。国内の災害発生時には企業、ボランティア、行政と連携し、調整役を担う。西日本豪雨の際にはレスキューチームを派遣し、取り残された住民を救助した。
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緊急災害対応アライアンス SEMA
民間の力で公的支援を補完するためのアライアンス。支援を主導する自治体に迷惑をかけない、地域経済を壊さないなどのルールを設けて、積極的な被災地支援活動を行っている。