協賛企業について

生産から食卓まで地域に寄り添い行う支援

キリングループは、2011年7月に「復興応援 キリン絆プロジェクト」を発足。被災3県に対し、支援を行ってきました。2013年からは、支援の第2ステージととらえ、食に携わる企業として、「生産から食卓までの支援」をテーマに活動を開始。“地域ブランドを育てること”“農・水産物の価値を高めて販路を拡大すること”そして、“将来の担い手・リーダーを育成すること”に取り組み、近年では地域活性化のためのプロジェクトにも力を入れています。 「キリンの支援の特徴は、ただ資金的な支援をするだけでなく、キリンの社員が現地に入って地域社会の課題を把握し、キーパーソン、パートナーを巻き込んでお手伝いしていくことにあります」とCSV推進部の四居さんは語ります。今回は、そんな事例のなかから、2つの代表的な事例をご紹介します。

遠野をビールの里へ <岩手県>

パドロンの栽培を行う農家との出会い

 キリンが考える復興支援のひとつに、“将来の担い手・リーダーを育成すること”があります。地域が自らの力で立ち上がり自走するためには、産業の担い手、リーダーの存在が不可欠だと考えているからです。そうした考えから立ち上げたのが『東北復興・農業トレーニングセンタープロジェクト』でした。2013年から3年間で84名がプロジェクトに参加し、新しい農業の創出をめざしています。

 このプロジェクトの第一期生のひとりが、岩手県遠野市で農業を行っていた遠野アサヒ農園の吉田敦史さんです。吉田さんは、妻・美保子さんの実家である遠野市を訪れた際に農業に触れ、2008年に移り住みました。彼が遠野市で栽培をしていたのが、「パドロン」という野菜。パドロンとは、スペイン原産のしし唐とピーマンを掛け合わせたような野菜で、スペインではビールのおつまみとして親しまれる、日本の枝豆のような存在です。吉田さんは、このパドロンを多くの人に知ってもらうためのブランディングをしたいと考えていました。

『東北復興・農業トレーニングセンタープロジェクト』をきっかけに、吉田さんに出会ったキリンCSV推進部浅井隆平さんは、吉田さんの活動を聞き「これは、おもしろいことができるかもしれない」と直感します。実は、吉田さんがパドロンを育てる遠野市は“ホップの里”。キリンビールとも大変ゆかりの深い土地だったのです。

「ホップの里」から「ビールの里へ」

 岩手県遠野市は日本産ホップの一大産地。ホップとは、ビールに爽やかな苦みと華やかな香りをもたらす、「ビールの魂」ともいわれる原料です。遠野市では、50年以上前からキリンビールの商品に用いるホップの契約栽培を行ってきました。しかし、現在の生産量はピーク時の4分の1程度となり、生産者の高齢化などからピーク時は200軒以上あった生産農家も今では40軒を切るまでに減少。キリンビールは約10年前から「遠野×キリンプロジェクト」を立ち上げ、遠野産ホップの価値化やPRを行ってきた経緯がありました。

 そんな遠野の地で、ホップの畑に囲まれて、ビールのおつまみであるパドロンを育てる吉田さんの姿をみたとき、浅井さんは運命的なストーリーを感じたといいます。遠野を「ホップの里」から「ビールの里」にしよう。こうして新たなプロジェクトが動き始めました。

新しい仲間とともに実現する「醸造する町 Brewing Tono」

 遠野を「ビールの里」にしようという取り組みは、行政や遠野市民が主体となり、2015年以降さまざまな形で動いています。『ホップ収穫祭』と呼ばれるビール祭や、首都圏からのお客さんとともに遠野市を巡る『ビアツーリズム』。ホップが収穫される7月下旬から9月上旬に、まるでワインのボージョレ・ヌーヴォーのように、遠野産ビールの解禁を祝う祭『フレッシュホップフェスト』などが開催されました。とくに2015年に開催された『ホップ収穫祭』には2500人が来場。翌2016年は4500人が訪れるにぎやかなお祭りに育っています。

「このお祭りによって、それまで街の特産物であるホップの存在やその価値を知らなかった遠野市民の皆さんに、ホップが街の資産であることを認識いただけるきっかけになったと思います」とCSV推進部の四居さん。

さらに、昨年からは地域おこし協力隊制度を活用して起業家を募集し、地域課題の解決や活性化につながる起業をサポートする「Next Commons Lab(ネクストコモンズ・ラボ)」が、遠野市や、キリングループなどのサポーターとともに、ビールによるまちづくりプロジェクト「醸造する町 Brewing Tono」を立ち上げ、ビールの里に向けた新たな展開を見せています。行政・企業・生産者などが連携し、ホップ栽培だけでなく、ビールの醸造までを地域の産業として育成し、さらには文化として根付かせていくことを目的にプロジェクトメンバーを募集し、ビジョンに共感した醸造家とホップ生産者を志す数名が今春から遠野に移住し、事業化を目指します。

ホップが結ぶキリンビールと遠野市とのつながりは、『東北復興・農業トレーニングセンタープロジェクト』をきっかけとする"遠野パドロン"農家の吉田さん、キリン浅井さんとの出会いにより、大きな展開を見せることとなりました。そして、さらにたくさんの新しい仲間たちが加わり、『醸造する町 Brewing Tono』としての町づくりが始まっています。

キリングループは、これからも夢を追いかける地域の担い手・リーダーたちの取り組みに寄り添いながら、遠野市の町づくりを応援するとともに、新しいビール文化の発信を彼らと一緒に行っていきたいと考えています。

「殻付き牡蠣」で宮城の水産業を応援する <宮城県>

浜ごとの「殻付き牡蠣」の魅力を届けたい

 宮城県産の牡蠣は味がいいことから、古くからこの地を代表する水産物のひとつでした。しかし、東日本大震災の津波により宮城県沿岸部の被害は壊滅的な状況になり、牡蠣の養殖施設はことごとく流され、800人いた牡蠣養殖漁業に携わる人々の半数近くが休業や廃業を余儀なくされてしまいました。再建するにも牡蠣は生育までに1年を要します。その間、多くの販路を失ってしまうことも大きな痛手でした。「このままでは、牡蠣養殖の担い手もいなくなってしまう。宮城県産の牡蠣が途絶えてしまうのではないか」。そんな危機感を抱いた宮城県漁業組合と、被災地の水産業復興支援に取り組むキリングループがスタートしたのが『宮城県産 殻付き牡蠣 ブランディングプロジェクト』でした。

震災以前は、「宮城県産牡蠣」とひとくくりされ、全体の90%がむき身で出荷されていました。しかし、震災時には殻をむく加工場も失ったため、殻付き牡蠣で出荷する機会が出てきました。近年オイスターバーや牡蠣小屋などが全国的に増え需要が高まっていたことが、プロジェクトの背景にあります。そして、何よりも浜ごとに異なる牡蠣の魅力を伝えることは、消費者にとっても生産者にとっても新たな価値になると考えたと、キリンCSV推進部 渕田紳一さんは語ります。

「たとえば、『唐桑』の牡蠣はふっくらと大粒で甘みが強いのが特徴ですし、『鳴瀬』の牡蠣は小振りながらも濃厚です。これらの牡蠣を殻付きで販売し、浜ごとのこだわりや特徴を発信し付加価値を生み出すこと。そして多くの方に知っていただくことは、大きな意味があるのではないかと思ったのです」

 まずは、すっかり流された養殖棚を新たにつくることから始まりました。これまでのむき身の牡蠣は質よりも量を重視されていたため、養殖棚は密集し大きな身に成長することができない状態でした。そこで新たな牡蠣棚は、一つ一つが充分に育つようゆったりと設置。また、育成途中においても間引きを行うなど、品質の高い牡蠣づくりへのチャレンジが始まったのです。

同じ目線で課題を解決するために

「皆さんの努力が実り、1年目からとてもいい牡蠣を収穫することができました。これを販路の途絶えた首都圏で広めるにはどうしたらいいか。飲食店さんや流通の皆さんとつながりのある私たちが大いに力を発揮したいと考えました」と渕田さん。

 まずは東京のオフィス街である大手町でおよそ2カ月半のイベントを開催。2015年1月からはじまったこのイベントは今年で3年目の今回は、宮城県さんに農林中央金庫さんも加わり、チーム宮城殻付き牡蠣の下『大漁や 宮城牡蠣の家』として今年も多くのお客様が訪れています。さらに、飲食店さんや流通の皆さんを招いて行う「牡蠣セミナー」や、現地を案内する「牡蠣バイヤーツアー」を開催。各地の牡蠣のおいしさ、特徴を知っていただく取り組みも行っています。

「多くの皆さんに宮城の水産品の魅力を知ってもらいたいですし、飲食店さんや流通関係の皆さんに取り扱いたいと思っていただきたい。そのための繋ぎ役になれたら」と語る渕田さんは、長らくビールの販売に直接携わっていないと笑います。

「ビールも自然の恵みなしにはつくれない農産物。おいしい食べ物があってこその文化です。ですから、資金面でのお手伝いというよりも、被災地の皆さまに寄り添い、がんばる皆さんを紹介したり、サポートすることで、私たちも一緒に幸せになれるのでは? と思っています。そのために現地には何度も足を運びますし、うまくいかない場合には、『問題はどこにあるのでしょう?』と直接伺って、課題解決の方向とその改善策を一緒に探求して行きたいと思っています。漁師の皆さんは、いいものをつくっているという自負がある。それでいて今回の取り組みは、ブランディングのために手間は増えるし、これまでやらなくてもよかったことまでしなくてはいけないから大変です。それでもなお、このブランディングにこそ宮城産の牡蠣の未来があると皆で共有できるよう、漁師の皆さんの声も聞きながらも、お客さまに良さが伝わるにはどうしたらいいか、どんな改善策があるのか、お話しています。最近では『殻付きの取り組みもおもしろいな』と言っていただける漁師さんが増えたことがとてもうれしいですね」

みんな笑顔で「乾杯!」する未来に向けて

 ブランディング、販路拡大と取り組みは進んでいますが、まだまだ道半ばと語る渕田さん。
「単に商品をつくりました、販路を増やしましたということだけでなく、その先にある“真の復興”を、プロジェクトを通して一緒に目指したいと思っています。あれから6年になりますが、まだまだ課題は山積しています。被災地で聞こえてくるのは、仮設住宅を出たい、家族と一緒に住みたい、子どもたちを仮設がなくなったグラウンドのある学校に行かせたいという声。そんなさまざまな想いをサポートしたいですし、家族が、子どもたちが、笑顔で楽しく暮らせるようになってはじめて、未来が見えてくるのではないかと思うのです」

 今後は漁業を次いでくれる漁師さんや、営業活動を行う人材の育成も求められると渕田さん。
「先は長いと思います。でも、みんな笑顔で暮らす未来にビールで乾杯したい、そんな思いでこれからもやっていきたいと思っています」と語ってくれました。

復興応援 キリン絆プロジェクト

http://www.kirin.co.jp/csv/kizuna/

キリングループは、東日本大震災復興支援に継続的に取り組むべく「復興応援 キリン絆プロジェクト」を立ち上げ、「絆を育む」をテーマに復興支援活動を開始。地域食文化・食産業(農業・水産業)の復興支援第2ステージとして、『生産から食卓へ』をテーマに、「地域ブランドの再生・育成」、「6次産業化の推進・販路拡大」、「将来にわたる担い手・リーダーの育成」の3つの支援を進めています。従来、現地が抱えていた社会課題を解決し、未来へ向けて新たな価値を創造することに注力し、復興応援からまちづくり応援へと、地域の活性化にも積極的にチャレンジしています。