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南相馬のこれからソフトバンクと子どもたちの未来を考える

震災から6年。南相馬 桜井勝延市長と、震災直後から被災地に入り支援活動に関わってきたソフトバンク CSR統括部長 池田昌人さんが、南相馬と子どもの未来について対談を行いました。

池田さん:震災からもうすぐ6年になります。桜井市長にとってこの6年はどういう月日でしたか?

桜井市長:自分自身を試された6年でした。前だけを向いて生きてきた私でしたが、震災そして原発事故の直後には、暗い世界に押し込まれそうな気持ちになったこともありました。まったく先が見えず、希望が見えないなかで、ひるむのか前に進むのか、自分自身と対峙する時間の連続でした。

2011年3月15日に市民の皆さんを避難させる決断をした際や、2016年7月の避難指示の解除の際など、6年の間には市民の個々人の思いとは対峙する判断をしなければならないこともありました。罵倒されたり、時には唾を吐きかけられたりすることもありましたが、常に自分と対話しながら、前に進む気持ちを持ち続けたことでここまで走り続けることができました。

池田さん:大変な6年間でしたね。

桜井市長:震災直後は、どうやって病院に酸素タンクを届けたらよいか、どうしたら皆さんを飢えさせずにすむか、どうやって燃料を手に入れるかなど、これまで経験したことのない課題に対処し続ける日々でした。職員たちも自分のことは後回しにして、一軒一軒を回り、自らガソリンを届けるような毎日でした。避難した人たちの不安、残った人たちの孤立感、この地を支えなければならないという使命感。さまざまな思いが交錯する複雑な状況のなかで、その時を支えてくれた職員たちを思い出すと今でも涙が出ます。本当に困難な時期でしたが、多くの人に素晴らしい生き様を見せてもらいました。貴重な心の財産をいただいたと思っています。

池田さん:子どもたちの環境に変化はありましたか?

桜井市長:震災直後は、0~6歳の未就学時が町からいなくなりました。お母さんたちの不安感を思うと当然だったのかもしれません。その後、どうしたら皆さんに安心感をもってもらえるのかを考え、モニタリング、除染、検査をし続けるなど継続的に実施してきました。平成27年ごろから市内の祭で子どもたちの姿が増え始めました。今は子どもたちも外で遊んでいるし、高校生たちは7割が町に戻ってきてくれています。

「この地域をなんとかしたい」
積極的に町づくりに参加する高校生たち

池田さん:これからも復興に向けてさまざまな課題があると思いますが、若者たちにどんなことに積極的に取り組んでもらいたいですか?

桜井市長:直接的な回答になっているかわかりませんが、この土地を発展させてきた人たちへの畏敬の念と誇りを土台にして生きていってもらいたいと思っています。命は連綿と続いています。自分たちがその中でいかに社会の役に立っていくか、それがこの震災で突きつけられたことでした。敗戦を経験した若者たちは、自分たちで地域をなんとかしなくてはいけないと考えたと思います。それと同様に、震災を経験した若者たちも「この地域を自分がなんとかする」という声を上げ始めています。震災によって多くの人の死や苦しみを目の当たりにする中で、この土地を思い、自らの社会的な使命を自覚し、自分は何のために大学に行くのか、卒業した後にどうしたいのかということを真剣に考えている。そんな若者が増えていることをとても頼もしく思っています。このような変化は震災がなければなかったかもしれません。

池田さん:そんなふうに若者が育ってきているのですね。ソフトバンクグループでは、「TOMODACHI ソフトバンク・リーダーシップ・プログラム」として、東北3県からこれまでに700名、南相馬からは5年間で32名の高校生をアメリカに派遣しました。リーダーシップと地域貢献を学んでいただき、地元のための活動をしてもらうプログラムですが、そういった変化に少しでも携われているでしょうか。

桜井市長:常に希望を持てるメッセージを発信し続けてくれたおかげで子どもたちは前に進もうと思えたのだと感じています。若者たちは新しい世界をみて、地域のための新しいビジネスモデルを考え取り組んだ。その経験は、「高校生でもこういうことができるんだ」という自信を与え、積極的に街づくりに関わるようになってくれたと思っています。私の前で「俺は政治家になる!」なんて将来の夢を語ったりした子もいましたよ。

子どもの頃からロボットに触れ、未来を描くきっかけに

池田さん:他に何か新しい動きはありますか?

桜井市長:震災後は、いかにマイナスの要素をプラスにできるかを考えてきました。たとえば、南相馬をロボットの利活用が進んだ「ロボット産業都市」にしようという取り組みもそのひとつです。「あの街は何か新しい実験をやっているよ」「なんかおもしろい動きが始まっているね」と、いい意味での風評を立たせ続けるのが、私の仕事だと思っています。

池田さん:ロボット産業都市の構想はどのような背景から出てきたのでしょうか?

桜井市長:人手不足に悩む地域をどう活性化させるのかを考えたとき、人材確保の方法だけでなく、効率化についても知恵を働かせなくてはいけません。特に農業や介護の分野では、ロボットを活用していける場面も多いのではないかと考えています。例えばドローンでの農作物の受粉や野生動物の群管理、ロボットトラクターなども、実現すれば素晴らしいと思いますし、ロボットを使ってできることは無限大です。子どもの頃からロボットに触れ、ロボットを活用してどんなことができるか考える土壌づくりはとても大切だと思っています。

池田さん:何か具体的に準備をされていることはありますか?

桜井市長:市としてめざすビジョンに沿って、小学生、中学生、高校生、それぞれの学びの環境が整い始めています。その一例として、来年には南相馬市の小高商業高等学校と小高工業高等学校を統合した「小高産業技術高校」が開校します。小高産業技術高校の生徒たちには、技術を社会的にどのように役立たせるのかを考え、自分たちに必要なロボットを自らの手で設計することを学んでほしいと思います。学びと社会が繋がることで、子どもたちの勉強への意欲が変わってくるのではないでしょうか。

また、池田さんもご存じのように、『Pepper 社会貢献プログラム スクールチャレンジ』で、ソフトバンクグループから人型ロボット Pepperを3年間無償貸与していただくことになりました。今年の春からは、南相馬市内の全公立小中学校でPepperを活用したプログラミング授業が開始されます。子どもの時からロボットに触れ、プログラミングを学ぶことで、思い通りにロボットが動く喜びや感動を通じて、子どもたちの感覚がさらに進化していくことを期待しています。

2020年、南相馬は「ワールドロボットサミット」の会場のひとつになることが決まりました。世界中から南相馬に技術者が集まるわけです。そうしたことも見据え、この地をロボット体験と実証ができるテストフィールドにしたいと考えています。

心地よく生きるための知恵を出し合える町に

池田さん:街の大きな動きが、子どもたちの希望に繋がっていく、そういう瞬間に立ち会えている気がして、わくわくしますね。

桜井市長:自分の地域のマイナスの課題を、どうしたらプラスの方向にもっていけるのかを考える。そういう幸せづくりが私の仕事だと思っています。「わくわくしている人、面白いことを企てている人がいっぱいいるね」という地域なったら人が集まります。そういう地域にできるように頑張ります。

池田さん:今日お話しを伺って、我々の震災支援の活動が、微力ながらも町のサポートに繋がっているのかもしれないと感じられて、嬉しく思っています。最後に南相馬の復興への思いをお聞かせください。

桜井市長:一般的に「復興」というと建物を建て直したり、工場を整備し直したりするなど表面的なことをイメージする人が多いですが、一番の復興は、人が希望を持ち生活できるようになることだと思っています。人と人とが有機的に結びつき、お互いに認め合える環境により、幸せな地域は生まれると思います。そしてそれには、日頃から心の痛みを感じること、「弱さの実感」が大切だと考えています。弱さを実感し、それを共有し、弱い自分たちがともに生きていくためにはどうしたらよいのか考えるからこそ、人にはより強い絆が生まれ、地域が強くなる。だから、みんな、自分は弱いということ、非力だということを実感すべきなのです。南相馬は痛みを知った土地です。だからこそ人々が強い絆をもち、希望のある地域にしていけると思っています。自分の非力さを実感し、誰かを押しのけて自分だけが強くなるのではなく、みんなが心地よく生きるために知恵を出し合える、そんな街づくりをこれからも行っていきたいと思っています。

課題を解決しながらも
これからは未来をつくっていきたい

南相馬 小高区役所長
安部 克己さん

震災から6年。いまは、不安と希望の半分半分というのが正直な気持ちです。昨年7月に帰還困難区域を除く避難指示区域が解除されたことにより、震災以降、人がすっかりいなくなった小高の街にも住人が戻ってきました。それでも、街には薬局や病院など足りないものがまだまだたくさんありますし、増殖し家々を荒らすイノシシをどうするのか、祭はどう運営すればいいのかなど、あらゆる面から不安や心配がたくさんあります。一方で、来年には小高区に小高産業技術高校ができ、小中学校も再開します。福島の国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想や、南相馬のロボットテストフィールド計画など、産業や雇用の回復につながる取り組みがスタートするという明るいニュースも続いています。

特に、ロボット技術に関連する研究・開発や先端技術を活用した農林水産業の再生を掲げる私たちにとって人材育成は大切な課題です。そうしたなか、ソフトバンクグループの「Pepper 社会貢献プログラム」や「TOMODACHI ソフトバンク・リーダーシップ・プログラム」などの支援は、子どもたちに新たな可能性を提供し、未来を担う人材を育成することに繋がっています。

これまでの6年間、私は支援に駆けつけてくださる皆さんに対し「何が足りない」「何が必要だ」というお話ばかりしてきました。しかし、これからは「未来をつくる」ためのお話を一緒にできればと思っています。皆さんの温かい支援を受けてこの街がどのように育ち、新たな街づくりを行っていくのか、引き続き見守っていただけたらうれしく思います。

ソフトバンクグループの復興支援

http://www.softbank.jp/corp/csr/reconstruction/

ソフトバンクグループでは、東日本大震災発生直後より、行政から避難所へ情報を届けるタブレットの提供や寄付プラットフォームであるチャリティホワイトによる継続寄付、地域を担う若いリーダーを育成するTOMODACHIプログラムなど被災地に寄り添った復興支援を行ってきました。
これからも、ソフトバンクグループにできることを考え、お客さまと共に継続した支援に取り組み、東北の「これから」を応援します。