支援先について

認定NPO法人底上げ(宮城県気仙沼)

http://sokoage.org

2011年、ボランティアで気仙沼に駆けつけた3人の若者がその地に留まり、NPO法人「底上げ」を立ち上げた。勉強を教える「学習コミュニティ支援」を開始し、放課後に高校生が集まれるフリースペースをつくった。語り合ううちに「気仙沼のために何かしたい」と思う有志が、高校生団体「底上げYouth」を結成。故郷のために挑戦し続ける高校生に芽生えた変化とは何か。

「気仙沼は故郷であると同時に、新しいことにチャレンジしやすい町。とにかくワクワクする場所なんです」そう話すのは、人懐っこい笑顔が印象的な小野寺真希さん(21歳)。現在は山形にある東北芸術工科大学コミュニティデザイン学科に通う3年生だ。卒業に必要な単位をほぼ取得し、今年4月からは地元である宮城県気仙沼市に戻り、町づくりに携わる仕事に挑戦する予定だ。
地域の課題をコミュニティという観点から解決する「コミュニティデザイン」を大学で学んだのも、気仙沼の町づくりに携わる仕事にチャレンジしたいと思ったのも、すべてはNPO法人「底上げ」の高校生団体「底上げYouth」の活動に参加したことがきっかけだった。

高校生が主体性を持って考え行動する「底上げYouth」

そもそも「底上げ」とはどんな団体か。震災後、避難所運営やがれき除去などのボランティアをするために、20代の若者が気仙沼に駆けつけた。家族を亡くして悲しむ子どもたち。片付けても片付かないがれきの山。「惨劇を目の辺りにし、ただ『地元の人たちや子どもたちの力になりたい』という思いだけで私は仕事を辞め、気仙沼に住民票を移しました」と同団体理事・成宮崇史さんは振り返る。偶然出会った同世代の矢部寛明さん(同団体代表)と斉藤祐輔さんの3人で、2011年8月から仮設住宅に暮らす小中高校生らの勉強を教え始め、同年11月には「学習コミュニティ支援」を行うNPO法人を設立。さらに週2回、放課後に子どもたちが自由に集まれる場所をつくり、「地域にできること」を話し合う「子ども会議」を始めた。「実際に行動してみよう」とメンバーの有志により自発的に生まれたのが、高校生団体「底上げYouth」だ。

「底上げYouth」は、高校生ならではの視点でプロジェクトを展開している。その1つが2012年に発足した「恋人プロジェクト」だ。気仙沼出身の歌人・落合直文が明治時代の文芸誌「明星」で書いたことから「恋人」という言葉が広まったという話を聞き「『恋人』にまつわる気仙沼のスポットを紹介して観光につなげよう」というアイデアが生まれ、題材も文章も生徒たちがゼロから考え、1年がかりで観光リーフレットを作成。2014年3月にはその観光スポットを巡る「恋人ツアー」を企画し、話題を集めた。

生き生きした友だちの姿を見て「底上げYouth」のメンバーに

そんな「底上げYouth」の存在を小野寺さんが知ったのは、2013年の高校3年生の時。震災の津波で実家が流されてしまい、気仙沼の内陸部にある親戚の家に身を寄せていた。「家にいる時はずっと本を読む生活で、特に目標もなく、何もする気が起きませんでした。でも、外から来てくださった人たちや自衛隊員の方が、地元の学校の校庭で支援活動をしてくださる姿を見ながら、『今のままの自分でいいのかな……』ともやもやした気持ちがずっと胸の奥にあったんです」(小野寺さん)。

「活動の発表会を開くから、とにかく来てよ!」ある日突然、「底上げYouth」に所属していた友だちに誘われた。よく分からないまま発表会場の市民会館に足を運ぶと、80人もの大人が集まる前で「恋人プロジェクト」の活動をパワーポイントや寸劇で発表する友だちの生き生きした姿があった。「とっても楽しそうに見えた」と言う小野寺さんは、自ら「底上げYouth」に参加することを決めた。

司会進行は当番制。「ファシリテーターって何!?」

2013年、小野寺さんを含め「底上げYouth」に興味を持った数名が新たなメンバーに加わった。「恋人プロジェクトチーム」のほか、地元のお祭りをアピールしていく「お祭りチーム」と、郷土料理を若者向けにアレンジして紹介する「フードチーム」が誕生した。小野寺さんは「お祭りチーム」に参加。月2〜3回、6人のメンバーが集まり、気仙沼の祭りをどう紹介すれば多くの人に魅力が伝わるか、話し合いを重ねた。

プロジェクトに参加して小野寺さんが驚いたのは、もともといたメンバーが少しずつ構築していった「ミーティングの進め方」だったという。「司会進行役は当番制でした。「ファシリテーター」や「アイスブレーク」(ゲームや運動などで話しやすい雰囲気を作るための手法)といった言葉を初めて知り、見よう見まねでやりました。皆の意見をどう聞き出してまとめればやるべきことにつながるのか、模索しっぱなしでした(笑)」

そんな高校生たちにそばで寄り添う「底上げ」のスタッフは、具体的な指示や助言は極力控えた。一方で、彼ら彼女らが勇気を持って一歩が踏み出せるように背中を押し、動くことで学ぶように促した。また、「生徒の親に活動の意義を説明したり、地域のイベントを手伝って周りの人たちの信頼を得たりして、子どもたちが自ら考えて動きやすい環境を整えていきました」と成宮さんはいう。

「祭りの魅力を、あらためて多くの人に伝えるにはどうすればいいだろう」と皆でひたすら考え、話し合った。そうして辿り着いたのが、手に取ってもらいやすい「うちわ」を“伝えるツール”にしようという案だった。祭りの成り立ちや、楽しむためのポイントをまとめ、メンバーが描いたイラストも印刷。8月に開催された「気仙沼みなと祭り(http://www.kesennuma.or.jp/minatomatsuri/)」の会場で、用意した3000枚の「うちわ」をすべて配りきった。

小野寺さんはこの体験から1つのことを皆で作り上げていくことの楽しさを知ったという。「最初は分からないことだらけでしたが、自分たちで調べて、人に聞いて、話し合って、行動した。失敗を重ねながら想いがカタチになった時、素直にうれしかった」。

気仙沼は「新しいことへのチャレンジ」を応援する町

改めて小野寺さんに「気仙沼の良さは何か」と聞くと、「新しいことにチャレンジすることを認めてくれる人がたくさんいる町」という答えが返ってきた。自分が「やりたい」と思ったことを応援し、ヒントをくれる地元の人たちがいる。外から気仙沼に入ってきて今もなお活動を続けている人たちもいて、多様な人と人とのつながりがチャレンジできる土壌を育んでいる。「底上げYouth」に参加し、こうした人たちと関わるうちに、ワクワクするような「冒険心」と、課題を前向きに乗り越えようとする「主体性」が小野寺さんの中に芽生えた。「こんな面白い町、どこにもないと思います」

今後は大学で学んだ「コミュニティデザイン」の理論を、地元での実践につなげたいという。「自分が変わるきっかけになった『底上げYouth』に参加する高校生のチャレンジをサポートしたいですし、将来は、多くの人がこの町に愛着を持つような“ワクワクする仕掛け”をたくさんつくる仕事がしたいです」と小野寺さんは目を輝かす。

「ここには面白い仕事がない」と話す高校生も少なくない。NPO法人「底上げ」は、そんな高校生と地域のために活動している大人たちが食事をしながら交流する場もつくっている。同団体の成宮さんは、「こうした大人たちとのつながりを機に、『自分たちが町のために何かしたい』と考える高校生を増やし、彼らと伴走しながら自らが考えて動いて『想いをカタチにできる力』を育てる活動をさらに続けていきたい」と話す。地域を愛し、活動する若者が1人でも増えることが、気仙沼の未来を明るくする。

NPO法人「底上げ」とは:
「学習コミュニティ支援」をメーン事業に、気仙沼市・南三陸町において週2回放課後に子どもが集まれる居場所作りを行う。「町のために何かしたい」と考える高校生の活動を支援し、主体性や自己肯定感を育む。“底上げ”とは、国民1人ひとりの意識を底上げしようという考えから名付けられた。